「英雄旅譚メーカーでつくった話」について

英雄旅譚メーカーというものを使い話をよろしくと声をかけてもらったので、書きました。まとまった文章をネットにあげる場所、ここにしかつくってないので、ここにコピペしたものを貼ります。以下、お話です。

 

 

0.ジェネレーター内容

あなたは < ヒステリックな偏見や高慢 > の下で日常を送っていました。そこである死体に出会います。焼死体。焼かれて砕けた骨だけ残る。泣き女が欠片を集め、百の薬草と混ぜ合わせ不死の薬を煎じた。永遠の命を求めて権力者達が奪い合う。

 その時 < 誘惑と堕落 > が起こり、その結果、あなたは < 見通しが暗い状況 > を体験する。

 その後、あなたは < 節度と調和した恵み > のために、非日常に誘われるが、あなたは < 父性に基づく秩序や寛大さ > の行動によって、その誘いを拒みます。

 そんなあなたの前に < 度を越えた贅沢、我儘、嫉妬 > が起こり、案内人:《道化師》が現れます。

 その者があなたに < 不公平、一方的な裁定 > をもたらすことであなたは旅立ちを余儀なくされます。

 いよいよ非日常への境界へ向かう途中に < 完成、実現、大きな計画 > が起こります。

 そしてあなたの前にゲートキーパー:《探索者》が立ちはだかる。

 その者とあなたの間には < 不運や裏目 > が生じ、その結果あなたは境界を越えてゆく。

非日常に踏み込んだあなたには < 事故や災難 > < 自己犠牲、苦悩を超越した努力 > < 前進する勇気と勝利 > の試練が待っているが、

 仲間1:《英雄》と仲間2:《支配者》の助けによってそれを乗り越える。

 そして、ついにあなたは最終目標を見定めます。

 そこでは < 高望みによる失敗 > が起こります。

 その深奥にはラスボス:《創造者》が待ち構えてます。

 あなたは《英雄》の < 度を越えた贅沢、我儘、嫉妬 > と《支配者》の < 熟練の技術や研究の追求 > によって、最後の敵を打ち破ります。

 冒険を終えたあなたは < 傲慢な支配 > についての報酬を得て、日常へと帰還する。思い返せば、その死体はとても綺麗な死体だった

 

 

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「神々の世界」

  1. ことのはじまり

一人の神が、ほかの神々を支配していた。一人の神は世界をつくり、その下でほかの神々は暮らしていた。神々はその世界で自らの世界を作り出し、その自ら作り上げた世界に人間を作り、人間はそこで暮らしていた。神々は常に争っていた。自分の作り出した世界が一番いいものだと他の神に自慢しあい、人間は世界を美しくするために酷使された。一人の神もまた、度を越して傲慢であった。神々への支配を強めたら、神々はさらに人間の支配を強くした。そうして長い時間を生きていた。

だが、あるときに神々のうちの一人が死んだ。神々の争いのうちに、誤って焚火を踏んづけてしまい、瞬く間に体は火に包まれた。焼け死んだ神の骨は見たことのない様々な色の石に変わった。そして、死んだ神のもとで支配されていた人間には混乱が訪れた。

神々は死んだ神が変化した石を奪いあった。石は永遠を神に指し示し、永遠を約束しようと言った。永遠を手に入れた神々は安心しきって、世界を作ることをとめてしまった。一人の神もそうであったため、人間は神々の支配を逃れた。

次に起こったのは人間の争いであった。神々の世界を抜け出し、他の世界へ侵略するようになった。人間が人間を殺し、世界を奪い合った。だが、神々は意に介さなかった。

あるとき、人間の男が空を見上げると、神々の暮らしが目に入った。永遠を石に約束された神々の暮らしは豊かであった。その世界だけ、すべてがあった。そこに、流れ星が落ちてきた。流れ星は言う。

「お前は神々がうらやましくないのか。勝手に人間を支配していたと思ったら急にやめ、争いを止めようともしない。俺はうらやましい。神々をこの世界に落としてやりたいくらいだ」

男は返す。

「ああ、うらやましい」

流れ星はこう返した。

「だったら、神々に目にものみせたくないかい」

流れ星の誘いに、男はこう返す。

「だが、俺には無理だ。なぜならば家族がいる。家族を置いて、どうしてこの世界を離れられるだろうか」 

流れ星はこう言う。

「俺は死んだ神の小指の骨だ。俺は悔しくて悔しくてたまらない。俺は小さすぎて、石になれなかったんだ。協力すれば、神々が持っている石を、人間のもとに渡してやろう。俺なら石たちと交渉できる」

男は同情と石の魅力に負け、小指の骨とともに旅に出ることにした。

 

 

 

  1. 神々の世界へ

 男と小指の骨は、世界の門へとたどり着いた。そこで、巡礼者に出会った。巡礼者は世界をめぐり、世界をその目で確かめることを信仰としていた。巡礼者は男と小指に声をかけた。

「なあ、俺は世界を巡っているんだが、お前たちはどこに行くんだ」

男が答えた。

「俺は神々の世界に行くんだ」

巡礼者は驚き

「それは本当か、俺はまだ神々の世界に行ったことはないんだ。他の誰かが行ったという話も聞いたことがない。俺も連れて行ってくれ」

男は戸惑いながら言う

「いや、俺はただ単に神々の世界に行こうと思うんじゃない。神々のあの石を奪おうと思っているんだ」

巡礼者はさらに驚いた様子で

「なんだと。それは本当か。そんなことができるとは到底思えない。そもそも、どうやって行こうと思っているんだ。神々の世界に到達したとして、神々の傲慢さは知っているだろう。簡単に奪えると思っているのか」

小指の骨は巡礼者の疑問にこう答えた。

「だから俺がいるんだ。俺なら石たちは応えてくれるだう」

巡礼者は納得した様子で

「ほお、お前は神の骨か。俺はそんな危ない橋はわたれない。神々の世界についていくことはやめたよ。期待しているよ」

そんな言葉を投げかけながら、巡礼者は町へと続く道に戻り、歩いて行った。そして男と小指の骨は巡礼者とは逆の方向へと歩み始めた。

 

 

  1. 神々の世界

さて、神々の世界に足を踏み入れた男と小指の骨は、洞窟の前にたどり着いた。そこには神々の内の一人がいた。神はこう話しかけてきた。

「なんでこんなところに人間がいるんだ。さっさともとの世界に帰るんだな」

男はこう嘘をついた。

「そうもいかないんだ。どうやら俺のいた世界がなくなってしまった。気が付いた時にはここにいたから、帰り方がわからない」

神は言った

「そうなのかそれなら、こっちの方向ではない。引き返すんだな」

男はこうこたえた

「その洞窟はどこにつながっているんだい」

神はこたえた

「この洞窟は一人の神のもとへと繋がっている。お前には関係ないことだ。さっさと立ち去るんだ」

男は言った

「神々の世界に入るなんて、滅多にないことだ。ぜひとも一人の神のもとへと行って見たいんだが」

神は言った

「たかが一人の人間の願いをきくことなどできるわけがない。さっさと立ち去るんだ」

男は言った

「どうしてもだめなのか」

神は言った

「どうしてもだ。さっさと立ち去るんだ」

そこで小指の骨が男の懐から声色を変えてこう言った。

「なんだ、矮小な一人の人間のいうことくらい、一度くらいなら聞いてもいいだろう。お前はそこからどいて、その人間を通せ」

その声は一人の神の声だったので、神は驚いた。

「なんということだ。一人の神が言うことならしかたがない。俺はここをどくとしよう」

こうして無事に男は洞窟へと入ることができた。

 男が洞窟に入り、しばらく進むと懐から小指の骨をとりだした。それは小指の骨から木でできた横笛に変わっていた。横笛は言う。

「この横笛は一人の神がいつも吹いていた笛だ。だから、一人の神の声が使えたのだ」

男は聞いた。

「だが、どうして姿を変えることができたんだ」

横笛は答えた

「俺は手の一部だった。この手でいろんなものを創り出してきたんだ。そのものに成ることなぞ、当然のことさ」

男と横笛は、どんどん洞窟へと進んでいった。進んでいくと、大きな鉄の扉があった。そこには神が立っていた。

神は言った。

「この先は一人の神が住んでいる。この先には進ませない」

横笛は一人の神の声で言った。

「なんだ、矮小な一人の人間のいうことくらい、一度くらいなら聞いてもいいだろう。お前はそこからどいて、その人間を通せ」

神は言った。

「そんなことには騙されんぞ。どうやら人間一人だと思ったが、なにやらもうひとつ懐にいるようだな。そいつを出してみろ」

男は懐から横笛を出すと、それは杖に変わっていた。神は驚き言った。

「それは一人の神の杖じゃないか」

男は杖で一度、神を打ち据えた。

「ああ、やめてくれ、やめてくれ。そいつに打たれたら俺は消えてしまうだろう」

そうして神は逃げ出し、男と杖は扉を進めるようになった。

 男と杖は、一人の神が住んでいる居城に入り、石がしまってある部屋までついた。そこには一人の神は、様々な大きさの石の内、一番大きな石を持っていた。男が石をとろうとすると、石が叫び声をあげた。

「なんということだ。なぜ人間がこんなところにいるんだ」

その叫び声を聞き、一人の神が現れた。

「こんなところに人間がいるとは驚いた。その石をとろうと思うんだな。だが、ここは人間のいるところではない」

男は牢屋に入れられた。杖はその正体を見破られ、小指の骨に戻されてその部屋の隅に置かれてしまった。小指の骨は石に向かってこう言った。

「おい、かつて俺を支配していた頭蓋骨よ。どうしてお前はそんなつまらない石になってしまったんだ。そしていちばんつまらない一人の神のところへ置かれ、ただこんな狭い部屋の中で埃をかぶっている。かつてのお前は俺を使い、お前の思うままのものを創り出していた。体の一番高いところにあり、五感と思慮を司っていたお前はどうしてそんな姿になってしまったのか。今一度俺と一緒に来ないだろうか。俺と一緒に、人間の世界に行こうではないか」

石は震え、涙を流した。

「その声は俺の体で一番かわいらしい小指じゃないか。そんなお前がこんなところまでやってくるなんて、俺は嬉しくて恥ずかしい。俺は今、お前に勇気をもらった。今一度、お前と一緒に行こうではないか」

石は頭蓋骨へと変わり、小指の骨とともに、男が捕まっている牢屋へと向かった。小指と頭蓋骨は牢を開け、男を外に出した。小指は言った。

「俺の体を支配していた頭蓋骨がともに来てくれることになった。これで、石に変わったすべての骨を、お前のもとに集められるだろう」

男は右手に頭蓋骨を、左手に小指の骨を持ち、一人の神のもとへといった。一人の神は、男の姿を見て驚いた。

「なんということだ。それがあの石か。俺はそんな薄汚いものを大事に部屋の奥にしまっていたのか」

神の死をまじかに目にした一人の神は恐怖し、屋敷の奥へと隠れてしまった。

 こうして男はすべての石を骨に戻し、そして自分の世界へと戻っていった。頭蓋骨は人間の世界をその思慮により治め、人間の世界には平穏が訪れた。小指の骨は男の家で役に立っているという。

 

 

以上。