映画「不安の種」について

友人と「不安の種」の映画観ました。原作の漫画が好きで、DVDのレンタルリリースを待ちわび、ようやく友人宅で上映会。ホラー映画なので(しかも原作が漫画)もともと期待してなかったのですが、案の定おもしろくなかった。

 

一言で感想。

盛り上がりもなく、ホラー映画としても怖くないという、微妙な映画。

まず、原作と比べてみての感想を。原作の漫画は基本短編で、1つの話が3p~5pという短いオムニバス形式になってます。特徴としては、登場人物が何かしらの怪異、怪奇現象に出くわして話が終わる。出くわした結果どうなるかは描かれず、タイトルの通り不安にさせる漫画です。心臓に悪いというよりかは、背筋がぞっとするような感覚。

映画はどのような形をとったかというと、漫画の短編集を一つのオリジナルの話に落とし込む方法をとっていました。おちょなんさんも、マネキン女も、ファミレスで水を出したらついてくる女も、目玉も、すべて同じステージに登場。みんな仲良くしています。しかし、これにより怖さが半減したと感じてしまいました。これ以外の方法で「不安の種」をどう映画化すればいいかと問われると、答えに窮しますが、つまらなかった。怪異が集まれば集まるほど、一つ一つの怪異の怖さが薄れていきます。

映画の落ちはあまりパッとしなかった。平行世界の存在やループしてるなと匂わせるが、特にそこを強調するわけでもなく、ぬるっと終了。たぶん漫画の明確な結末を明かさないという型を踏襲したのかもしれませんが、そこを映画でやっても面白くありませんでした。

 

 

次に、原作と切り離しての感想を。「原作を意識するから、おもしろくないと感じるんだ!」という訳でもなく、カメラ、音楽、登場人物に注目してみてもおもしろい要素はないです。

まずカメラ。終始「動きのない画面が何秒も続く」という場面がありました。役者が動かない、しゃべらない、背景も特に動くこともない。多用しているので、監督のなんらかの意図があったかもしれないけど、観ててダレました。

音楽。ロックのイントロみたいなギターがガチャガチャ鳴らすという音楽を使用していたが、場面にあってなかったです。少し怖い場面だったのに音楽が鳴った瞬間、気分が萎えました。

登場人物。明確な主人公はおらず、だいたい3人くらいの視点を行き来して映画は進行します。3人分の視点から語られたら、思考がぶれてしまい、どこに焦点を合わせていいのか、わかんなくなりました。それにより感情移入がいまいち出来ないので、怪異にあっても、登場人物と同じように恐怖できなかった。

でも、設定は良かったと思います。一つの町で怪異が起こり、登場人物はこの町で様々な怪異に巻き込まれます。登場人物もしきりに「この町はおかしい」「この町は狂ってる」というセリフを口にします。町全体が不穏な空気に包まれている様子がよくわかり、場の不気味さが出てました。映像でもこの感じが醸し出されていました。個人的に工場地帯と住宅街が混在しているような郊外の風景が好きなので(えんとつのそばに立っている薄汚いマンションとか、地元民しか利用しないようなファミレスとか)、この点はプラスになりました。町全体を鳥瞰する図が何回か出たので、監督も町全体が何かおかしいということを印象付けたかったのかな?

 

この映画はステージ作りは成功していたけど、キャラクターの動かし方を誤ったんだと思います。